包《つつ》ましげなるに、顔色さえ悪《あ》しかりしを、親《した》しめる女囚に怪《あや》しまれて、しばしば問われて、秘めおくによしなく、遂《つい》に事|云々《しかじか》と告げけるに、彼女の驚きはなかなか妾にも勝《まさ》りたりき。
七 理想の夫
かくの如く男らしき妾《しょう》の発達は早かりしかど、女としての妾は、極めて晩《おそ》き方《かた》なりき。但《ただ》し女としては早晩《そうばん》夫《おっと》を持つべきはずの者なれば、もし妾にして、夫を撰《えら》ぶの時機来らば、威名|赫々《かくかく》の英傑《えいけつ》に配すべしとは、これより先、既に妾の胸に抱《いだ》かれし理想なりしかど、素《もと》より世間見ずの小天地に棲息《せいそく》しては、鳥なき里の蝙蝠《かわほり》とは知らんようなく、これこそ天下の豪傑なれと信じ込みて、最初は師としてその人より自由民権の説を聴き、敬慕の念|漸《ようや》く長じて、卒然夫婦の契約をなしたりしは葉石《はいし》なり。されどいまだ「ホーム」を形造《かたちづく》るべき境遇ならねば、父母|兄弟《けいてい》にその意志を語りて、他日の参考に供し、自分らはひたすら国家のために尽瘁
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