問う、罪を贖《あがな》い得たる者を救助するの法ありや、再び饑餓《きが》の前に晒《さら》して、むしろ監獄の楽しみを想わしむることなきを保《ほ》し得るや。
九 爆発物の検査
これより先、重井《おもい》らは、東京にての金策|成就《じょうじゅ》し、渡韓の費用を得たるをもて、直ちに稲垣と共に下阪《げはん》してそが準備を調《ととの》え、梅清処塾《ばいせいしょじゅく》にありし壮士は早や三々五々渡韓の途《と》に上《のぼ》りぬ。妾は古井、稲垣両氏と長崎に至る約にてその用意を取り急ぎおりしに、出立の一両日前、重井、葉石、古井の三氏および今回出資せる越中《えっちゅう》富山の米相場師某ら稲垣と共に新町遊廓に豪遊を試み、妾も図《はか》らずその席に招かれぬ。志士《しし》仁人《じんじん》もまたかかる醜態を演じて、しかも交誼《こうぎ》を厚うする方便なりというか、大事の前に小欲を捨つる能《あた》わず、前途近からざるの事業を控えて、嚢底《のうてい》多からざるの資金を濫費《らんぴ》す、妾の不満と心痛とは、妾を引いて早くも失望の淵《ふち》に立たしめんとはしたり。出立の日|重井《おもい》の発言によりて大鯰《おおなまず》
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