の借金のいい訳《わけ》は婦人に限るなど、唆《そその》かされて詫《わ》びに行き、存外|口籠《くちごも》りて赤面したる事もあり。凡《およ》そ大阪にて無一文の時二、三十人の壮士をして無賃宿泊の訴えを免れしめ、梅清処塾《ばいせいしょじゅく》の書生として事なく三週間ばかりを消過せしめしは男子よりはむしろ妾の力|与《あずか》りて功ありしならんと信ず。今日に至るも妾はこの計画の能《よ》くその当を得たるを自覚し、折々語り出でては友人間に誇る事ぞかし。もし妾にして富豪の家に生れ窮苦《きゅうく》の何物たるを知らざらしめば、十九《つづ》や二十歳《はたち》の身の、如何《いか》でかかる細事《さいじ》に心留むべきぞ、幸いにして貧窶《ひんる》の中《うち》に成長《ひととな》り、なお遊学中独立の覚悟を定め居たればこそ、かかる苦策も咄嗟《とっさ》の間《かん》には出でたるなれ。己れ炊事を親《みずか》らするの覚悟なくば彼《か》の豪壮なる壮士の輩《はい》のいかで賤業《せんぎょう》を諾《うべな》わん、私利私欲を棄《す》ててこそ、鬼神《きしん》をも服従せしむべきなりけれ。妾《しょう》をして常にこの心を失わざらしめば、不束《ふつつか
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