時の風潮、日々朝野を論ぜず、一般に開戦論を主張し、その勢力実に盛んなりしに、一朝平和にその局を結びしを以て、その脳裏に徹底する所の感情は大いに儂らのために奇貨《きか》なるなからん乎《か》、この期失うべからずと、即ち新たに策を立て、決死の壮士を択《えら》び、先ず朝鮮に至り事を挙げしむるに如《し》かずと、ここにおいて檄文《げきぶん》を造り、これを飛ばして、国人中に同志を得、共に合力《ごうりょく》して、辮髪奴《べんぱつど》を国外に放逐《ほうちく》し、朝鮮をして純然たる独立国とならしむる時は、諸外国の見る処も、曩日《さき》に政府は卑屈無気力にして、かの辮髪奴のために辱《はずかし》めを受けしも、民間には義士烈婦ありて、国辱をそそぎたりとて、大いに外交政略に関する而已《のみ》ならず、一《いつ》は以て内《うち》政府《せいふ》を改良するの好手段たり、一挙両得の策なり、いよいよ速《すみ》やかにこの挙あらん事を渇望《かつぼう》し、かつ種々心胆を砕《くだ》くといえども、同じく金額の乏しきを以て、その計画成るといえども、いまだ発する能《あた》わず。大井、小林らは、ひたすら金策にのみ、従事し居たりしが、当地にお
前へ
次へ
全171ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福田 英子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング