り、この事件にして成就《じょうじゅ》せば、数万《すまん》の報酬《ほうしゅう》を得んこと容易なれば、その上にて総《すべ》て花々しく処断すべし、何とぞ暫しの苦悶を忍びて、胎児を大切に注意しくれよと他事《たじ》もなき頼みなり。素《もと》より彼を信ずればこそこの百年の生命をも任したるなれ、かくまで事を分けられて、なおしもそは偽りならん、一時|遁《のが》れの間《ま》に合《あわ》せならんなど、疑うべき妾にはあらず、他日両親の憤《いきどお》りを受くるとも、言い解《と》く術《すべ》のなからんやと、事に托《たく》して叔母《おば》なる人の上京を乞い、事情を打ち明けて一身《いっしん》の始末を托し、ひたすら胎児の健全を祈り、自ら堅く外出を戒《いまし》めしほどに、景山《かげやま》は今|何処《いずく》にいるぞ、一時を驚動せし彼女の所在こそ聞かまほしけれなど、新聞紙上にさえ謳《うた》わるるに至りぬ。

 二 分娩《ぶんべん》、奇夢

 その間の苦悶そもいくばくなりしぞや。面白からぬ月日を重ねて翌二十三年三月上旬一男子を挙《あ》ぐ。名はいわざるべし、悔《くい》ある堕落の化身《けしん》を母として、明《あか》らさまに世の
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