、いとど深き哀れを催し、彼らにしてもし妾より先に自由の身とならば、妾の出獄を当署にて聞き合せ、必ず迎えに来るようにと言い含め置きたりしも、両女は終《つい》に来らざりき。妾出獄の後《のち》監獄より聞きし所によれば、両女ともその後再び来らず、お花は当市近在の者にて、出獄後間もなく名古屋へ娼妓《しょうぎ》に売られたり、またお菊《きく》は叔父《おじ》の家にも来らず、その所在を知るに由《よし》なしとの事なりき。ともかくも妾の到る処|何処《いずこ》の監獄にてもかかる事の起りしは、知らず如何《いか》なる因縁《いんねん》にや。あるいはこの不自由なる小天地に長く跼蹐《きょくせき》せる反響として、かく人心の一致集注を見るならんも、その集中点の必ず妾に存せるは、妾に一種の魔力あるがためならずや。もし果してさるものありとせば、好《よ》しこの身自由となりし時、所有《あらゆる》不幸不遇の人をも吸収して、彼らに一縷《いちる》の光明を授けんこと、強《あなが》ちに難《かた》からざるべしとは、当時の妾が感想なりき。
五 看守の無学無識
当市の監獄には、大阪のそれと異《こと》なりて、女囚中無学無識の者多く、女監取締
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