の意なるべしと、われは思へり。
○人《ひと》無茶苦茶に後世を呼ぶは、猶《なほ》救け舟を呼ぶが如し。身の半《なかば》は既《はや》葬られんとするに当りて、せつぱつまりて出づる声なり。
○識者といふものあり、都合のいゝ時呼出されず、わるい時呼出さる。割に合はぬこと、後世に似たり。示教を仰ぐの、乞ふのといふ奴に限りて、いで其《その》識者といふものゝ真《まこと》に出現すとも、一向言ふ事をきかぬは受合《うけあひ》也。
○僅《わづか》に三十一《みそひと》文字を以てすら、目に見えぬ鬼神《おにがみ》を感ぜしむる国柄なり。況《いは》んや識者をや。目に見えぬものに驚くが如き、野暮なる今日の御代《みよ》にはあらず。
○今人《こんじん》は今人のみ、古人の則《のり》に従ふを要せずと。尤《もつと》もの事なり。後人《こうじん》亦《また》斯《か》く言はんか、それも尤もの事なり。
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○さま/″\なる世に在りて、いづれを上手と定めんは、いと難《かた》し。孰《いづ》れを下手と定めんは、いと/\難し。上手を定めんよりも、下手を定めんは一層難き事なり
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