ロリと此方《こなた》の頭の先から足の先|迄《まで》見下《みおろ》しましたこのやうな問答《もんだう》は行水《ゆくみづ》の流れ絶《た》えず昔《むかし》から此河岸《このかし》に繰《く》り返《かへ》されるのですがたゞ其時《そのとき》私《わたくし》の面白いと思ひましたのは、見下《みおろ》した人も見下《みおろ》された人も、殆《ほとん》ど同じ態度に近寄りまして更《あらた》めて感《かん》に入《い》つた一呼吸《いつこきう》の裡《うち》にどちらもが妾《めかけ》のありさうにも有得《ありえ》さうにもないのゝ明《あきら》かな事でした即《すなは》ち妾《めかけ》を置きますのを、こよなき驕奢《けうしや》こよなき快楽としますやうな色が、其《その》どちらもの顔一|杯《ぱい》に西日《にしび》と共に照《てり》渡つた事でした。(十六日)
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二の酉也《とりなり》、上天気也《じやうてんきなり》、大当《おほあた》り也《なり》と人の語り行《ゆ》くが聞《きこ》え申候《まうしそろ》。看上《みあ》ぐるばかりの大熊手《おほくまで》を担《かつ》ぎて、例《れい》の革羽織《かはばおり》の両国橋《りやうごくばし》の中央に差懸《さしかゝ》
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