なゝ》つで男の子が二人《ふたり》あると申しました
      ○
悠然《いうぜん》と車上《しやじよう》に搆《かま》へ込《こ》んで四方《しはう》を睥睨《へいげい》しつゝ駆《か》けさせる時は往来《わうらい》の奴《やつ》が邪魔《じやま》でならない右へ避《よ》け左へ避《さ》け、ひよろひよろもので往来《わうらい》を叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]《しつた》されつゝ歩く時は車上《しやじよう》の奴が《やつ》が癇癪《かんしやく》でならない。どちらへ廻《まは》つても気に喰《く》はない。
(以上十月二十日)
      ○
さうだ、こんな天気のいゝ時だと憶《おも》ひ起《おこ》し候《そろ》は、小生《せうせい》のいさゝか意《い》に満《み》たぬ事《こと》あれば、いつも綾瀬《あやせ》の土手《どて》に参《まゐ》りて、折《を》り敷《し》ける草の上に果《はて》は寝転《ねころ》びながら、青きは動かず白きは止《とゞ》まらぬ雲を眺《なが》めて、故《ゆゑ》もなき涙の頻《しき》りにさしぐまれたる事に候《そろ》。兄《あに》さん何して居《ゐ》るのだと舟大工《ふなだいく》の子の声を懸《か》け候《そろ》によれば其《その》時の
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