《しやふ》とは落ちしなるべし。定《ぢやう》かや足は得洗《えあら》はで病《やまひ》の為《た》めに程《ほど》なく没《ぼつ》したりとぞ
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エモンを字の如《ごと》くイモンと読んで衣《きぬ》に附《つ》けた紋《もん》と心得《こゝろえ》て居《ゐ》た小説家《せうせつか》があつたさうだが、或《ある》若《わか》い御新造《ごしんぞう》が羽織《はをり》を幾枚《いくまい》こしらへても、実家《じつか》の紋《もん》を附けるのを隣の老婢《ばあや》が怪《あやし》んでたづねると、良人《やど》と儂《わたし》は歳《とし》の十|幾《いく》つも違ふのですもの、永く役に立つやうにして置かねばと何でも無しの挨拶《あいさつ》に、流石《さすが》おせつかいの老婢《ばあや》もそれはそれはで引下《ひきさが》つたさうだ此処迄《こゝまで》来れば憾《うら》みは無い。
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いつの年《とし》でしたか私《わたくし》の乗りました車夫《くるまや》が足元《あしもと》へ搦《から》み着《つ》へた紙鳶《たこ》の糸目《いとめ》を丁寧《ていねい》に直して遣《や》りましたから、お前《まい》は子持《こもち》だねと申しましたら総領《そうりよう》が七《
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