豊穣也《ごこくほうじようなり》、三|銭均一也《せんきんいつなり》。これで女房が車から下《お》りて、アイと駄賃《だちん》を亭主に渡せば完璧々々《くわんぺき/\/\》
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状使のこれは極《きは》めて急なれば、車に乗りて行《ゆ》けと命《めい》ぜられたる抱車夫《かゝへしやふ》の、御用《ごよう》となれば精限《せいかぎ》り駈《か》けて駈《か》けて必《かなら》ずお間《ま》は欠《か》かざるべし、されど車に乗ると云《い》ふは、わが日頃《ひごろ》の誓《ちかひ》に反《そむ》くものなれば仰《おほ》せなれども御免下《ごめんくだ》されたし、好《この》みてするものはなき賤《いや》しき業《わざ》の、わが身も共々《とも/″\》に牛馬《ぎうば》に比《ひ》せらるゝを耻《はぢ》ともせず、おなじ思《おも》ひの人の車に乗りて命をも絞《しぼ》らん汗《あせ》の苦しきを見るに忍《しの》びねばと、足袋《たび》股引《もゝひき》の支度《したく》ながらに答へたるに人々《ひと/\》其《その》しをらしきを感じ合ひしがしをらしとは本《もと》此世《このよ》のものに非《あら》ずしをらしきが故《ゆゑ》に此男《このをとこ》の此世《このよ》の車夫
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