》となるに、何《なに》一つわが方《かた》に貢《みつ》がぬは不都合《ふつがふ》なりと初手《しよて》云々《うん/\》の約束にもあらぬものを仲人《なかうど》の宥《なだ》むれどきかず達《たつ》て娘を引戻《ひきもど》したる母親|有之候《これありそろ》。聞けば此《この》母親娘が或《ある》お屋敷《やしき》の奥向《おくむき》に奉公中《ほうこうちう》臨時《りんじ》の頂戴物《てうだいもの》もある事なればと不用分《ふようぶん》の給料を送りくれたる味の忘られず父親のお人よしなるに附込《つけこ》みて飽迄《あくまで》不法《ふはふ》を陳《ちん》じたるものゝ由《よし》に候《そろ》。さては此《この》母親の言ふに言はれぬ、世帯《せたい》の魂胆《こんたん》もと知らぬ人の一旦《いつたん》は惑《まど》へど現在の内輪《うちわ》は娘が方《かた》よりも立優《たちまさ》りて、蔵《くら》をも建つべき銀行貯金の有るやに候《そろ》。間然《かんぜん》する所なしとのみ只《たゞ》今となりては他《た》に申すやうも無之候《これなくそろ》
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娘売らぬ親を馬鹿《ばか》だとは申し難《がた》く候《そろ》へども馬鹿《ばか》見たやうなものだとは申得
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