花散る容子《ようす》を御参《ござん》なれやと大吉が例の額に睨《にら》んで疾《とう》から吹っ込ませたる浅草市羽子板ねだらせたを胸三寸の道具に数え、戻《もど》り路《じ》は角《かど》の歌川《うたがわ》へ軾《かじ》を着けさせ俊雄が受けたる酒盃《さかずき》を小春に注《つ》がせてお睦《むつ》まじいと※[#「口+愛」、第3水準1−15−23]《おくび》より易《やす》い世辞この手とこの手とこう合わせて相生《あいおい》の松ソレと突きやったる出雲殿《いずもどの》の代理心得、間、髪を容《い》れざる働きに俊雄君閣下初めて天に昇るを得て小春がその歳暮《くれ》裾曳《すそひ》く弘《ひろ》め、用度をここに仰ぎたてまつれば上げ下げならぬ大吉が二挺三味線《にちょうざみせん》つれてその節《おり》優遇の意を昭《あき》らかにせられたり
 おしゅんは伝兵衛おさんは茂兵衛小春は俊雄と相場が極《き》まれば望みのごとく浮名は広まり逢《あ》うだけが命の四畳半に差向いの置炬燵《おきごたつ》トント逆上《のぼせ》まするとからかわれてそのころは嬉《うれ》しくたまたまかけちがえば互いの名を右や左や灰へ曲書《きょくが》き一里を千里と帰ったあくる夜千
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