は、宛《さなが》ら陽気にふるえる様に暖かく黄味《きみ》な光線《ひかり》を注落《そそぎお》とす。
狂熱《きょうねつ》し易《やす》い弱い脳の私は刺戟されて、遂《つ》いうつらうつら[#「うつらうつら」に傍点]と酔った様になってしまう、真黄《まっきい》な濃厚な絵具を野《の》一面にブチ撒《ま》けたらしい菜の花と、例の光線が強く反射して私の眼はクラクラと眩《まぶ》しい。それでも、畿内の空の日だと思うと何となく懐かしい、私は日頃の癖のローマンチックの淡い幻影《まぼろし》を行手《ゆくて》に趁《お》いながら辿った。
額は血が上《のぼ》って熱し、眼も赤く充血したらしい? 茲《ここ》に倒れても詩の大和路だママよと凝《じっ》と私は、目を閉《つむ》って暫《しば》らく土に突っ立っていた。すると後ろにトンカタントン……、奇妙に俄《にわ》かに自分を呼覚《よびさま》すかのような音がした。
瞬間の睡眠《ねむり》から醒めた心地で、ぐるりと後ろの方を向くと家が在り、若い女が切《しき》りと機《はた》を織っている。雪を欺《あざ》むく白い顔は前を見詰《みつめ》たまま、清《すず》しい眼さえも黒く動かさない、ただ、筬《おさ》ばか
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