、構造組織の上に變化が表はれてくる。かくして環境、有機體、文化的全體の中に不變恒常の成分が働いてゐることを發見するといふのが、類型學者の考へ方である。

             七

 かやうに類型學者の求むる所は、不斷の變化の中にありて、固定不變の規準を發見することで、環境、文化的全體の變化に左右されず常に一定の方向を取る所の樣式でなければ、眞の類型とはいへないであらう。類型學者の研究としてはこの種の類型の發見で滿足すべきであるかも知れないが、これが實際教育の上に適用される場合には、それでは不十分になつてくる。
 今一例を擧げて見よう。茲に類型學者によりて構造的に内向型であると判斷された一兒童があるとする。彼は内氣で正直で温和な者であり、又正直のテストをすると高い點を取つたとする。しかし彼が家計の變化のために正に餓死に瀕せんとするに至るや、彼は不正直な事を敢てするかも知れない。變數の正直は環境の中の飢餓の變數と密接な關係に立つ。しかし彼は餓死するか否かに拘らず、依然として構造上内向型であるといふ場合を考へて見よ。類型研究者からいへば正しい判斷を下したといへるが、實際教育者からいへば
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