數、角度等の靜的測定と、型の動的決定とは相違して居る。クレッチュマーの設定した肥滿型とか痩身型とか等と、身長、體重の比とを關係づける企ては、形式と内容との區別を全く無視したものである。榮養をよくしたり、飢餓に陷らせたりして、その者の身體的外觀を變化し得るが、しかしそれは現象型の一つか二つかを研究者に示すに過ぎない。彼が若し現象的に肥滿型であれば、それが飢餓に迫ると、現象的に痩身型になるかも知れない。比率やその他の客觀的靜的測定はこれ等の現象的變化を考慮に入れない。かやうな靜的測定を動物型の判斷に使用することは誤謬で、動的型には動物測定を使用すべきであるとする。
 この動的方法の主張者は又在來の人相學、骨相學、筆蹟學の方法をも批判する。即ちそれ等の學は、靜的樣式と動的特性との相關に立脚するもので、それ等は人格の形式と内容とを混同して居る。例へば書かれた文字の靜的線は、人格の動的又は變化的表現を示すものとは言へない。その一々の線は動的全體又は方向の一の徴表に過ぎない。故にその線は類型によりて規定された一の變數であり、他の幾多の變數と結合して、動的全體又は型の精密なる描寫がなされ得るのであると批判する。
 尚動的方法の主張者によると、今日物理學者の測定が相對的である如くに、心理學者も同樣なことをなさなければならぬとする 變化系統は無變化の尺度によりて測定することは出來ない。若しその系統の將來の行動又はその系統の方向を測定の結果から豫言したり統制したりするには、無變化の尺度や道具を用ひて測定してはならぬ。心理學に於ける解決は人間有機體である。人間有機體は變化しつゝあり、それは動的のものである。故に測定の道具は動的のものでなければならぬ。過去に於て心理學者と教育者とはテストを標準化し、觀察者の影響を出來るだけ除去せんと企てた それは彼等が彼等の測定を出來るだけ靜的不變化の尺度に歸せしめたことを意味し、又それが測定一般の理想であると考へた。その結果彼等は豫想し統制することが出來なくなつたと非難する。

             六

 如上の批判は古い精神檢査者に對して極めて適切なものである。動的測定を靜的測定に歸せしむる企ては、人間有機體を除去し、漸次に非人格的、客觀的テストにたよるやうになり、それ等の檢査者は豫想し、統制する能力を失ふに至るであらう。それには彼等の測定に動的
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