煎じ詰めれば
桐生悠々
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地から1字上げ](昭和十六年八月)
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煎じ詰めれば、理想と現実との衝突である。我は理想を見つめて、しかも漸次にこれを進まんとしているにも拘らず、彼等は現実に執着して、唯その直面する難局を打開し得れば、それで以て足れりとしているのだ。
だから、煎じ詰めれば、未来と現在との衝突でもある。我はワンズマンの修正により、進化論の適者を以て未来の状況に適応する者としているに反して、彼等はダーウィンの正統進化論により、唯現在の状況に適応するものを以て適者としている。従って、我は未来の向上を重しとし、現在の利益を未来の幸福のため、犠牲に供することを辞さないにも拘らず、彼等は唯現在に於て、一時的なる利益を得れば、未来の幸福を捨てて顧ない。
だから、煎じ詰めれば、新体制と旧体制との衝突でもある。彼等は彼等みずからを以て新体制の人なりとしているけれども、憐れむべし、彼等は現在より一歩も出ずることを知らず、甚しきに至っては、過去の伝統その物に囚われて、未来を予知し得
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