洪水後の悲惨の中、回復の道の一端を見る。人生の事、誠に心底の決定に在り。
十二月十八日。昨日、日暮里金杉逸見斧吉氏へ来泊。今日クリスマス。
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食前の祷
天の父母、我が父母を生み、我が父母、神の命によりて我を孕み我を産めり。肌と乳とを以て我を育せり。其の愛、神の如し。また天地の如し。我之を受けて恩とせず、其心また神の如し。
我れ水火を識別するに及で、父母我が飲食を斟酌す。此頃になりては、父母また神の如くならず。我亦た食慾を覚ゆ。
我やゝ長ずるに及で我が飲食を制す。我れ壮年に及で父母の制裁に安んぜず。或は暴飲暴食、時に病を受く。此時に当り、身を破り人道に反き、多く罪悪に陥る。陥りて後ち悔ゆ。其悔や厚く而も改むるに至らず。後ち大に悔いて大に改むるも、年已に遅し。
晩年に及で、知友の力ある誡告によりて、終に全く過を改むるに急なり。而して後はじめて神に仕へ、神より食を受くるの道を知り、食するものは皆な神より賜はるものたるを明かにさとりたり。こゝに数年の実行を践んで、いよ/\神の為に働くものは神より食を受くるなりと信ぜり。今日の働は今日の食に充つ。――
[#こ
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