にして神の子なり」
「偶々聖に似たるものあれども、一人の聖、独りの聖のみ。独立の成人なく、世界を負ふの聖人なし。故に我は我を恨む。我力の弱き、我信の薄き、我精神の及ばざる、我が勇気の足らざるを恨む」
「罪、汝が身に在り。寸毫も他を売るの資格なし。是れ予の熱誠、是れ誠に予が神を見るの秘訣なり。人生最上の天職は神秘の発明に在り。神秘研究の方面また甚だ多からん。予が神秘の要領は、即ち神を見るにあり」
「到底日本は狂して亡び、奢りて亡び、勝ちて亡び、凌いで亡び、詐りて亡び、盗んで亡ぶ、最も大なるは無宗教に亡ぶる事なり。誰ぞキリストの真を以て立つ人なきか。世界を負ふの大精神を有するもの無きか。予は在りと信ず。無しと言へば無し。在りと言へば在り。信の一のみ。神と共にせば、何事の成らざるなし。是れ億兆を救ふ所以なり」
「世界的大抱負は誠に小なる一の信に出づ。此の小や、無形にして小とだに名づけ難しと雖も、而かも天地に充ち、自在にして到らざる所なし。神ともなり、牛馬ともなる。世人此の易きを難しとして学ばず。予の悲痛苦痛、此処に在り」
末尾にかう書いてある。
 明治四十二年七月七日
  古河町停車場田中屋
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