大野人
木下尚江
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)最早《もう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)丸|卓子《テーブル》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから5字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)アリ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
[#ここから5字下げ]
昨年の秋『日蓮論』の附録にする積りで書きながら、遂に載せずに今日に及べるもの
[#ここで字下げ終わり]
一
日蓮を書いて居ると、長髪白髯の田中正造翁が何処からともなく目の前に現はれる。予は折々、日蓮を書いて居るのか、翁を書いて居るのかを忘れて仕舞つた。予が始めて翁を知つたのは最早《もう》十年以前。其時は丁度六十であつた。田中正造と云へば足尾鉱毒問題の絶叫者として、議会の名物男と歌はれて居た。予は其の議会の演説と云ふものを、一度も聴かなかつたが、速記録で読むと、銅山主や政府当局に対する罵詈悪口が砲弾の如く紙上に鳴動して、関東の野人が、満面朱を注いで怒号する様子が
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