の上にしるしまして、是れに麦種を蒔入れて置きまする。来春に相成りますると、其麦が青々と生えまして、心覚えになりましたものでござりまするが、只今は、鉱毒の為め芋が取れませぬから、何処をあるきましても、此の塚がござりませぬ。」
「大寒十二月の節に相成りますると、貉《むじな》や狐などが、人家軒端や宅地などを、めぐりあるきました。貉はガイ/\/\と鳴き、狐はコン/\/\と鳴く。ケイン/\と鳴くもありました。屋敷まはりなどに、人参など土に埋めて置きますると、掘り出して喰ふものでござりましたが、鉱毒の為め野に鼠も居らず、虫類も無く、魚類も少なき故なるべし、二十歳以下の青年は御存じありますまい。」
筆紙難尽、只今ありまするものは、芝も杉菜と申しまする草のみ満々と延びまする。
明治三十年旧十一月八日書出しましたこと
改明治三十一年旧二月十日
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]六十一歳 庭田源八
深傷の老獅子は吼える
「自然」か。「無智」か。否な、「政治の罪」だ。
鉱毒地に「兇徒嘯集」の大活劇が演ぜられて居る時、田中正造は議会の演壇に立つて居た。彼はこの日、進歩党を捨てた。彼
前へ
次へ
全46ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 尚江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング