即ち今日も書類を持つて居る。昨日もこの通り議長に返答致しませうと思ひましたが、予算会議の為に大層議論が忙がしい様に思ひましたから、その間を得て答弁を致しませうと思ひました。或ひは明日でも答弁致しますこれは不審に向ての御答であります』
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詭弁の雄者陸奥は避けて遂に答へなかつた。
廿六日、議会は解散された。陸奥が持つて居ながら、出すことを恐れた答弁書が、議会解散後の官報附録に左の如く載せてある。
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一、群馬栃木両県下渡良瀬沿岸の耕地に被害あるは事実なれども、被害の原因確実ならず。
二、右被害の原因に就ては、目下各専門家の試験調査中なり。
三、鉱業人は成し得べき予防を実施し、独米より粉鉱採聚器を購求して、一層鉱物の流出防止の準備をなせり。
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   農相陸奥宗光を罵る

明治廿五年二月、臨時総選挙施行。これが有名な民党一掃の選挙干渉で世の非難に堪へずして、内務大臣品川弥二郎は、議会召集に先だちて辞職した。
五月二日に臨時議会召集。十一日、先づ貴族院で選挙干渉難詰の建議案通過。翌十二日、衆議院は選挙干渉上
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