幸徳秋水と僕
――反逆児の悩みを語る――
木下尚江

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)呉《くれ》た

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+闊」、第4水準2−79−45]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)捜し/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

      一

 君よ。明治三十四年、僕が始めて社会党の創立に関係した時、安部磯雄、片山潜の二君は、年齢においても学識においても、長者として尊敬して居たが、親密な友情を有つて居たのは、幸徳秋水であつた。彼は僕より二つ年下であつた。幸徳を友人にしてくれたのは石川半山だ。
 僕がまだ二十代で、故郷で弁護士をして居た時、石川は土地の新聞主筆として招かれて来た。彼が好んで自分の師友の評判をする時、「幸徳秋水」の名前を頻りと吹聴した。
 石川が始めて故郷岡山を出て東京へ遊学の折、当時東洋のルソーと謳はれて居た中江兆民を、大阪に訪問した。その兆民先生
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