ア勝手に出来るぢやないか」
「其《さ》う言やマア、さうですがね、しかし能《よ》くまア、軍人などで芸妓《げいしや》を落籍《ひか》せるの、妾にするのツて、お金があつたもンですねエ」
お才は煙管《きせる》ポンと叩《たゝ》いて、フヽンと冷笑《わら》ひつ「皆ンな大洞さんの賄賂《わいろ》だアネ――あれでも、まア、大事なお客様だ、日本一の松島さんてなこと言つで、お煽《だて》てお置きよ、馬鹿馬鹿しい」
* * *
奥の二階の一室に対座せる二客、軍服の上へムク/\する如き糸織の大温袍《おほどてら》フハリ被《かぶ》りて、がぶり/\と麦酒《ビール》傾け居るは当時実権的海軍大臣と新聞に謡《うた》はるゝ松島大佐、対《むか》ひ合へる白髪頭《しらがあたま》の肥満漢《ふとつちよう》は東亜※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]船《きせん》会社の社長、五本の指に折らるゝ日本の紳商大洞利八、
大洞は満面に笑の波を漲《みなぎ》らしつ「で、松島さん、私共《わたくしども》は此際ですから、決して特別の御取扱を御願致す次第では御《ご》わせん、只《た》だ郵船会社同様に願ひたいので――本来を
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