は今更に自分の無智を耻《は》づかしく思ひます」梅子は又た語を継《つ》ぎぬ「私は今日《こんにち》迄《まで》、教会は慥《たしか》に世の光であると信じて居りました、今ま始めて既に悪魔の巣であつたことを見ることが出来ました、――而《し》かも其悪魔が私の父です――今日《こんにち》の会合《あつまり》は廿五年の祝典《いはひ》では御座いませぬ、光明《ひかり》を亡ぼす悪魔の祝典《いはひ》です、――我父の打ち壊《こ》はす神殿の滅亡を跪《ひざまづ》いて見ねばならぬとは、何と云ふ恐ろしき刑罰でせうか」
「其れは貴嬢《あなた》の誤解です」と篠田は首を振りぬ、「是《こ》れは新《あらた》に驚くべきことでは無いのです、失礼ながら貴嬢の父上は、神の教会を攪乱するの力を有つて居なさらぬ、梅子さん、私《わたし》が貴嬢の父上に向《むかつ》て攻撃の矢を放つたことは昨日今日のことではありませぬ、貴嬢も常に其を御読み下すつたでせう、又た御聴き下だすつたでせう、けれ共私は今日《こんにち》に至る迄、貴嬢との友誼《いうぎ》の上に何の障礙《しやうがい》をも見なかつたと思ふ、是れは規定《さだめ》の祈祷会や晩餐会に勝《まさ》りて、天父の嘉納ま
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