に知人が少ないですが、故郷の山、故郷の水、故郷の人、事に触れ時に従ひて、故郷程懐しきものはありません」
「伯母御様《をばごさま》は御達者で在《あら》つしやりまするか、永らく御目通りも致しませぬが――」
「ハイ、御蔭様で別状も無いやうですが――私も久しく無沙汰《ぶさた》致しましたから、一寸見舞にと思ひまして」
「成程《なるほど》」
「ヂヤ、与太、吉田屋の婆さんに能《よ》く言うて呉れよ、何《いづ》れ近日|返金《おけえし》するつてツたつてナ」と前車《まへ》の御者は喚《わめ》きつゝ、大宮行の馬車は国神宿《くにがみじゆく》に停車せり、
「どうせ、貴様《てめえ》から返金《かへ》して貰へるなんて思つちや居ねえツて言つたよ――其れよりかお竹の阿魔に、泣かずに待《まつ》てろツて伝言《ことづけ》頼むぞ、忘れると承知しねえぞ」と後車《あと》の御者は答へつゝ、篠田と老人とを乗せたる一|輌《りやう》は、驀地《まつしぐら》に孤《ひと》り奔《は》せぬ、
「旦那、此|界隈《かいわい》もヒドく寂《さび》れましたよ」と老人は欺息《かこ》ちつ、

     二十四の二

 雪の坂路を、馬車は右に左にガタリ/\と揺れつゝ上り
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