《も》し篠田様――の御縁家では――」
「ハイ、篠田の一族で御座います」
「篠田長左衛門様の――」
「左様《さう》です、長左衛門の伜《せがれ》で」
「左様《さやう》で御座りまするか」と老人は膝《ひざ》の下まで頭《かしら》を下げつ
「先刻からお見受け申す所が、長左衛門様|生写《いきうつし》で在《あら》つしやるから、若《も》し左様《さう》では在《あら》つしやるまいかと考へましたので」
 老人は早くも懐旧の涙に得堪へぬものの如し「私は小鹿野《をかの》の奥の権作《ごんさく》と申しますもので、長左衛門様には何程《どれほど》御厚情を蒙《かうむ》りましたとも知れませぬ、――彼《あ》の騒《さわぎ》で且那様は彼《あゝ》した御最後――が、百姓共の為めにお果てなされた長左衛門様の御恩を忘れてはならねえと、若い者等に言うて聴かせることで御座りまする――ぢやあ、貴郎《あなたさま》は慥《たしか》に長二様と仰《おつ》しやりました坊様で、イヤ、どうも立派な男に御成りなされました、全然《まるで》先《せん》旦那様に御目に掛るやうで御座りまする」
「左様《さやう》でありましたか」と篠田はうなづき「幼少で飛び出しましたので、誠
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