》に笑みつ「はア、閣下、山木には無骨《ぶこつ》な軍人などは駄目ださうです、既に三国一の恋婿《こひむこ》が内定《きま》つて居るんださうですから」
「フウ、外《ほか》に在《あ》るのか、其りや一ときは面白い、山木、誰ぢや、君の恋婿と云ふのは」
剛造は顔中撫で廻はして「閣下、其れは松島さんのお戯れで、決して外に約束など有る義では御座りませぬが――」
殆《ほとん》ど困却の山木を、松島は愉快げに尻目に掛けつ「然らば閣下、山木の恋婿《こひむこ》をば自分から御披露に及びませう――日本社会党の領袖、無政府主義の張本《ちやうほん》、同胞新聞主筆篠田長二君と仰せられるのださうでツ」
「ヤ、松島さん」と色を失つて周章する剛造を、侯爵は稍々《やゝ》垂れたる目尻にキツと角立てて一睨《いちげい》せり、
「閣下、其れを御信用下だされましては、遺憾《ゐかん》千万に御座りまする、全く松島様の誤解で御座りますから――」
「松島、事実相違ないか、何《ど》うぢや」
大佐は冷然たり「閣下、私《わたくし》も帝国軍人で御座りまする」
「フム」と軽く首肯《うなづ》きて侯爵は又た山木の面《おもて》を睨《にら》めり、
「閣下、其れは
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