老女さんは、旦那様《だんなさま》が鹿児島の戦争で討死《うちじに》をなされた後は、賃機《ちんはた》織つて一人の御子息を教育なされたのが、愈々《いよ/\》学校卒業と云ふ時に肺結核で御亡《おなく》なり、――大和君の家《いへ》は元《も》と越後の豪農です、阿父《おとつ》さんが国会開設の運動に、地所も家も打ち込んで仕舞ひなすつたので、今の議員などの中には、大和君の家《うち》の厄介になつた人が幾人あるとも知れないが、今ま一人でも其の遺児を顧るものは無い、然《し》かし大和君は我も殆《ほとん》ど乞食同様の貧しき苦痛を嘗《な》めたから、同じ境遇の者を救はねばならぬと、此の近所の貧乏人の子女《こども》の為め今度学校を開いたので、今夜のクリスマスを以て其の開校式を挙げた積りのです、――兼吉君のことは花さん、既に御聞になつたでせう、兼吉君の阿父《おとつ》さんが、自分の財産《しんだい》を挙《あ》げて保証《うけにん》の義務を果たすと云ふ律義な人で無《なか》つたならば、老婆《おばあ》さんも今頃は塩問屋の後室《おふくろさま》で、兼吉君は立派に米さんと云ふ方の良人《をつと》として居られるのでせう、――私自身を言うて見ても
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