ましたの、どうせ泥水商売してるからにや、普通《なみ》の女《ひと》の様なこと思つたからとて、詮《せん》ないことなんだから、寧《いつ》そ松島と云ふ男《ひと》の所へ行つて、思ふ存分|我儘《わがまま》を働いて遣《や》らうかなどとも迷つたりネ、自暴《やけ》になつて腹ばかり立つて、仕様《しやう》も模様も無かつたのですよ、スルと湖月の御座敷で始めて此家《こちら》の先生様にお目に掛りましてネ、兼吉さんと米ちやんとのお話を承はつてる中に、私の心が妙な風に成つて来ましてネ、仮令《たとひ》女性《をんな》の節操《みさを》を涜《けが》したものでも、其が自分の心から出たのでないならば、咎《とが》めるに及ばぬと仰《おつ》しやつたお言葉が、ヒシと私の胸を刺《さし》ましたの、して見ると私などでも余り世間を怨んで、ヒガミ根性《こんじやう》ばかり起さんでも、是れからの心の持ち様一つでは、人様の前へ顔出しが出来るやうになれるかと不図《ふと》思ひ浮かびましてネ、其れから二日二晩と云ふもの考へ通しましたけれど、如何《どう》したら可《い》いのか少しも方角が付かぬぢやありませんか、一つ篠田様にお願申して見る外無いと思ひましてネ、二日
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