いしや》を誘拐《かどわか》して妾にする如き乱暴漢《ならずもの》が、耶蘇《ヤソ》信者などと澄まして居たのだから驚くぢやないか」
剛造は低頭《うつむ》ける我女《わがこ》の美くしき横顔チラと見やりて、片膝|起《た》てつ「ぢや、梅子、私《わし》は明朝一番※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車《ぎしや》で九州まで行つて来るから――是れも皆《みん》な篠田の仕業《しわざ》だ、坑夫共を煽動《せんどう》して、賃銭値上の同盟などさせをるのだ、愈々日露開戦になれば石炭が上ると云ふ所を見込んでの悪策《いたづら》だ、――歳暮ではあり、東京《こつち》の用事も手を抜く訳にならぬけれど、今日も長文の電報で、直ぐ来て呉れねば何《どん》なことになるも知れぬと云ふのだから拠《よんどころ》ない――実に梅、悪い奴共の寄合《よりあひ》だ、警視庁へ掛合つて社会党の奴等《やつら》片端から牢へでもブチ込まんぢや安心がならない、――其れで一週間程で帰る積《つもり》だから、其間に松島との縁談、能《よ》く考へて置いて呉れ、私《わし》は決してお前の利益《ため》にならぬ様なこと勧めるのぢやない、――兼てお前は別家させる横《つもり》で
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