盟の破壊」と題せる二号活字の長文電報なり、篠田の心は先づ激動せり、
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……憲兵巡査の強迫は正面より来り、黄金の魔術は裏面より行はれたり……
首領株三十名今夕突然捕縛せられたり、憲兵巡査の乱暴|甚《はなはだ》しく、負傷者少からず其の多くは婦人小児なり……是れ買収政略の到底効果なきより来れるものと知らる……維持費尽く、
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「首領の捕縛」「公権の乱暴」「婦女小児の負傷」而《しか》して噫《あゝ》、「維持費尽く」
新聞|右手《めて》に握り締めたるまゝ、篠田は切歯《せつし》して天の一方を睨《にら》みぬ、
白雪一塊、突如高き槻《けやき》の梢《こずゑ》より落下して、篠田の肩を健《したゝ》か打てり、
午前七時半、警官来れり、
今や篠田の身は只だ一片の拘引状と交換せられんとすなり、大和は其の胸に取り付きて、鏡の如き涙の眼に、我師の面《かほ》を仰ぎぬ、
篠田は徐《おもむ》ろに其背を撫《ぶ》しつ、「君、忘れたのか――一粒の麦種地に落ちて死なずば、如何《いか》で多くの麦|生《お》ひ出でん――沙漠《さばく》の旅路にも、昼は雲の柱となり、夜は火の柱と現はれて、絶えず導き玉ふ大能の聖手《みて》がある、勇み進め、何を泣くのだ」
轍《わだち》の迹《あと》のみ雪に残して、檻車《かんしや》は遂《つひ》に彼を封して去れり、
[#地から2字上げ](明治三十七年一月―三月)
底本:「筑摩現代文学大系 5 徳富蘆花・木下尚江・岩野泡鳴集」筑摩書房
1977(昭和52)年8月15日初版第1刷
1981(昭和56)年11月15日初版第2刷
初出:「毎日新聞」
1904(明治37)年1月1日〜3月20日
※初収単行本は「火の柱」明治37年5月(平民社)
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:kompass
校正:松永正敏
2004年8月9日作成
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