、やうやく捜《さが》し出しましたよ」
言ひつゝ彼は裏《うち》なるポケットより一個の紙包を取り出して、主人に渡せり「今《も》一日後れりや、屑屋《くづや》の手に渡る所なんで――大切な原稿を間違へて、反古《ほご》の中へ入れちやつたてなことで、屑籠《くづかご》を打《ぶ》ちあけさせて、一々《いち/\》択《え》り分けて、本当に酷《ひど》い目に逢《あ》ひましたよ」
主人は黙つて其の紙包を開けり、中より出でしは皺《しわ》クチヤになれる新聞の原稿なり、彼は膝頭《ひざかしら》にて稍々《やゝ》之を押し延ばしつ、口の裡《うち》にて五六行読みもて行けり、
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……彼の主戦論者の声言する所を聞くに日露両国の衝突は、自由と擅制《せんせい》との衝突にして、又た文明と野蛮との衝突……と云ふ、吾輩|謂《おも》へらく決して然らず、是《こ》れ只《た》だ両個|擅制《せんせい》帝国の衝突のみ、両個野蛮政府の衝突のみ……………………財産の特権、貴族の遊食、………………総《あら》ゆる罪悪一に皇帝の名を仮りて弁疎……
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川地は目を揚げて吾妻を見つ「慥《たしか》に篠田の自筆か」
「左様《さう》です、間違ありませんよ」
「御苦労/\」と川地は首肯《うなづ》きつゝ己《おの》がポケットの底深く蔵《をさ》め「是《こ》れが在《あ》れば大丈夫だ、早速告発の手続に及ぶよ、実に不埒《ふらち》な奴だ、――が、彼奴《やつ》、何処か旅行したさうだが、逃《にげ》でもしたのぢや無《なか》らうナ」
吾妻は微笑《ほゝゑ》みつ「なに、郷里へ一寸《ちよつと》帰つただけのです、今晩あたり多分|帰京《かへ》つた筈です、で、罪名は何とする御心算《おつもり》ですネ」
「左様《さう》さナ」と主人は頬|撫《な》でつゝ「先《ま》づ不敬罪あたりへ持つて行くのだ、吹つ掛けは成《な》るべく大きくないと不可《いかん》からナ」
「エ、不敬罪ですつて」と吾妻は声やゝ打ち顫《ふる》へり、
主人は鋭き眼して睨《にら》みぬ「何だ」
「なに、何《どう》もしやしませぬがネ」と吾妻は心押し静めつ「何《ど》の道、大至急願ひたいものです――僕は最早《もう》篠田の面《かほ》を見るに堪へないですからネ」
吾妻の額には恐怖の雲|懸《かゝ》る、
「何をビク/\するんだ」と、主人は吾妻を一睨《いちげい》せり「其様《そんな》ことで探偵が勤まるか―
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