六《むつ》ヶ|敷《しい》文句ばかり書いてあるので、能《よ》くは解りませぬでしたが、何でも兼さんに、小米《こよね》さんを殺すなんて悪心が有つたのでは無いと云ふやうに思へましたよ、矢つ張裁判官でも人ですから、少しは同情《おもひやり》があると見えますわねヱ、だから阿母《おつかさん》、余り心配なさらぬが可《よう》御座んすよ」
「難有《ありがた》うよ」と老母は瞼《まぶた》拭《ぬぐ》ひつ「此程《このほど》も伜のことを引受けて下だすつた、弁護士の方が来《いら》しつたんでネ、先生様の御友達の方で、――御両人《おふたり》で種々《いろ/\》御相談なすつて在《いら》しつたがネ、君是れ程筋が立つて居るのに、若《も》し兼吉を無罪にすることが出来ないならば、弁護士を廃《や》めて仕舞へと、先生様が仰《おつ》しやるぢやないか、すると其方《そのかた》もネ、可《よろ》しい約束しようと仰《おつ》しやるんだよ、花ちやん、私、嬉しくて/\……」
「本当にねエ、阿母《おつかさん》」と、お花はブル/\と身を震《ふる》はしつ「何と云ふ御親切な方でせう、――私、考へる毎《たび》に――」と、面《かほ》忽《たちま》ちサと紅《あか》らめ「彼《あ》の様にお忙しい中で、私共のことまであれも是れもとお世話下さるんですもの、何《どう》して阿母《おつかさん》、世間態や人前の表面《うはべ》で、出来るのぢやありませんわねエ――近頃は又戦争が始まるとか、忌《いや》な噂《うはさ》ばかり高い時節ですから、夜分お帰りも嘸《さ》ぞ遅くて在《いら》つしやいませうねエ」
「左様《さう》ですよ、おつちりお寝《おや》みなさる間も無くて在《いら》つしやるので、御気の毒様でネ、ト云つて御手助《おてすけ》する訳にもならずネ――其れに又た何か急に御用でもお出来なされたと見えて、昨日新聞社から直ぐに御郷里《おくに》へ行らしつたのでネ」
「あらツ」と、お花は驚き顔「ぢや先生は御不在《おるす》なんですね――まア――何時《いつ》御帰宅《おかへり》になるんですの」
「端書《はがき》で言うて御遣《おつかは》しになつたのだから、詳しいことは解りませんがネ、明日の晩までには、お帰宅《かへり》になりませうよ、大和さんが左様《さう》言うてらしたから、だから花ちやん、丁度|可《い》い所へ来てお呉れだわネ、寂《さび》しくて居た所なんだから」
「私、まア――ぢや、私、お目に掛ること出来
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