》老人《としより》をお前、弄《なぶ》るものぢや無いよ、其れよりも、まア、何様《どんな》婦人《ひと》だか、何故《なぜ》連れて来ては呉れないのだ」
「伯母さん、最早《もう》、貴女《あなた》にも御紹介《おひきあわせ》した筈ですよ」
「虚《うそ》言うて」と伯母は口開いてカラ/\と打ち笑ひ「私《わし》がお前のお媽《かみ》さんを忘れて可《い》いものかの」
「サ、伯母さん、私の花嫁と云ふのは、其の『おかみさん』のことですよ」
「其のお媽《かみ》さんの名は何と言ふのだの」
「おかみさんと云ふのです」
「長二や、お前、何を言ふだ」と、伯母は又も声高く笑ふ、
「伯母さん、本当の話です、神様が私の花嫁のです、――父とも母とも花嫁とも、有らゆる一切です」
「ヘエ」と、伯母は良久《しばし》言葉もなく、合点《がてん》行かぬ気に篠田の面《おもて》を目《ま》もれり「お前の神様のお話も度々《たび/\》聞いたが、私には何分《どうも》解らない、神様が嫁さんだなんて、全然《まるで》怪物《ばけもの》だの」
「怪物ぢや無い、人ですよ、人の大きいのです、必竟《つまり》、人が神様の小さいのと思や可《い》いですよ」
「左様《さう》云ふものかの」と伯母は思案の首傾けつ、
「現に伯母さん、貴女の所へ私の両親も来る、貴女《あなた》の旦那様も来ると仰《おつ》しやつたでせう――怪物でも、不思議でもありませんよ」
「だがの、長二や、其れは皆《みん》な私《わし》の知つて居る人達だが、お前の嫁の其の神様には、お前、お目に掛つたことがあるかの」
「左様《さう》ですねエ――思ひに悩む時、心の寂《さび》しい時、気の狂ほしい時、熟《じつ》と精神を凝《こ》らして祈念しますと、影の如く幻の如く、其の面《おもて》も見え、其声も聴こゆるですよ、伯母さんのと格別|違《ちがひ》ありますまい」
「其れは長二や、未《ま》だお前には早過ぎるやうだよ」と伯母は頭《かうべ》を振りぬ「私も結局|孤独《ひとり》の方が好いと、心から思ふやうになつたのは、十年|以来《このかた》くらゐなものだよ――今だから洗ひ渫《さら》ひ言うて仕舞ふが、二十代や三十代の、未《ま》だ血の気の生々《なま/\》した頃は、人に隠れて何程《どれほど》泣いたか知れないよ、お前の祖父《おぢいさん》が昔気質《むかしかたぎ》ので、仮令《たとひ》祝言《しうげん》の盃《さかづき》はしなくとも、一旦《いつたん
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