実《おちつく》に連れて、次第に私を軽蔑《けいべつ》する様になるんですよ――折々はネ、私の為めに余儀なく此様《こんな》結婚をして一生不幸を見たなんて、残酷《ひどい》ことさへ言ふんですよ、――言はれて見れば私にも弱点があるから、言ひたいこともジツと耐《こら》へて居ますけれども、余り身勝手過ぎるぢやありませんかネ――それにネ、着物だの、何だのも、此頃《ちかごろ》は斯様《かう》云ふのが流行だなんて自分で注文するんですよ、何処《どこ》の流行《はやり》かと思へば、貴嬢、皆な新橋辺《しんばしあたり》のぢやありませんか――婦人《をんな》は矢張《やつぱ》り日本風の温柔《おとなし》いのが可《い》いなんて申してネ、自分が以前|盛《さかん》に西洋風を唱《とな》へたことなど忘れて仕舞つて私にまで斯様《こんな》丸髷《まるまげ》など結《ゆ》はせるんですもの、私耻づかしくて、口惜《くちお》しくて堪りませんの――」
 銀子は落る涙|拭《ぬぐ》ひつゝ「それに梅子さん他《ほか》の方の妻君《おくさん》など不思議だと思ひますよ、男子の不品行は日本の習慣だし、特《こと》に外交官などは其れが職務上の便宜《べんぎ》にもなるんだからなんて、平気で在《いら》つしやるんですよ――梅子さん、私は嫉妬心《しつとしん》が強いと云ふのでせうか」
「嫉妬心――」と梅子も覚えず、顔|紅《あか》らめつ「如何《いか》なる人でも境遇に打《う》ち克《か》つと云ふことは余程困難ですから、私は日本の様な不道徳な社会に在《あ》る婦人は、とても男子《をとこ》から報酬を望むことは断念せねばならぬと思ひますの、受くるよりも与ふるが寧《むし》ろ幸福ぢやありませんか、貴女が全心を挙げて常に道時さんを愛して居なさるならば必ず慚愧《ざんき》して、昔日《むかし》に優《まさ》る熱き愛憎を貴女に与へなさる時が来るに違《ちがひ》ありません」
「アヽ、梅子さん、其れが真理なんでせうねエ――」
「銀子さん、ほんとに貴女《あなた》こそ幸福ねエ――何故ツて?――貴女は愛を成就《じやうじゆ》なされたぢやありませんか、現今《いま》の貴女は只だ小波瀾の中に居なさるばかりです、銀子さん何卒《どうぞ》、私を可哀さうだと思つて下ださい、――私の全心が愛の焔《ほのほ》で燃え尽きませうとも、其《それ》を知らせる便宜《たより》さへ無いぢやありませんか、此のまゝ焦《こ》がれて死にましても、アヽ
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