そんなことを思い出していますが、あなたにもそうしてお世話をなさいました方がいらっしゃるのですか。私のように死なせてしまった娘さえも、どんな所へ行っているのだろう、どの世界というだけでも聞きたいとばかし思われるのですからね、御両親は行くえのわからなくなったあなたをどんなに恋しく思っておいでになるかしれませんね」
「あの時まで両親の一人だけはおりました。あれからのち死んでしまったかもしれません」
 こう言ううちに涙の落ちてくるのを紛らして、浮舟は、
「思い出しましてはかえって苦しくばかりなるものですから、お話ができなかったのでございますよ。少しの隔て心もあなたにお持ちしておりません」
 と簡単に言うのであった。
 薫は一周忌の仏事を営み、はかない結末になったものであると浮舟《うきふね》を悲しんだ。あの常陸守の子で仕官していたのは蔵人《くろうど》にしてやり、自身の右近衛府《うこんえふ》の将監《しょうげん》をも兼ねさせてやった。まだ童形《どうぎょう》でいる者の中できれいな顔の子を手もとへ使おうと思っていた。
 雨が降りなどしてしんみりとした夜に大将は中宮《ちゅうぐう》の御殿へまいった。お居間に
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