人はすべての禍根《かこん》を作った方であると、もう愛は覚えずなっているのであるが、そのおりの光景だけはなつかしく目に描かれた。

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かきくらす野山の雪をながめてもふりにしことぞ今日も悲しき
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 などと書いたりする手習いは仏勤めの合い間に今もしていた。自分のいなくなった春から次の春に移ったことで、自分を思い出している人もあろうなどと去年の思い出されることが多かった。そまつな籠《かご》に若菜を盛って人が持参したのを見て、

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山里の雪間の若菜摘みはやしなほ生《お》ひさきの頼まるるかな
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 という歌を添えて姫君の所へ尼君は持たせてよこした。

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雪深き野べの若菜も今よりは君がためにぞ年もつむべき
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 と書いて来た返しを見て、実感であろうと哀れに思うのであった。尼姫君などでなく、宝とも花とも見て大事にしたかった人であるのにと真心から尼君は悲しがって泣いた。
 寝室の縁に近い紅梅の色の香も昔の花に変わらぬ木を、ことさら姫君が愛しているのは「春や昔の」(春
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