もうかいのないこととしても、自分の心を告げておきたいと思って来たのであるが、紅葉《もみじ》の美しく染まって他の所よりもきれいにいろいろと混じって立った庭であったから、門をはいるとすぐにもう行く秋の身にしむことを中将は感じた。この風雅な場所に住む美しい人を恋人にしていたならば興味の多いことであろうなどと思った。
「少し閑散になりまして、退屈なものですから、こちらの紅葉も見ごろになっていようと思って出かけて来ました。いつもここはいい所ですね。なつかしい一夜の宿が借りたくなる所です」
こう言って中将は庭をながめていた。感じやすい涙を持った尼君はもう泣いていた。
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木がらしの吹きにし山の麓《ふもと》には立ち隠るべき蔭《かげ》だにぞなき
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と言うと、
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待つ人もあらじと思ふ山里の梢《こずゑ》を見つつなほぞ過ぎうき
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と中将は返しをした。尼になった人のことをまだあきらめきれぬように言い、
「お変わりになった姿を少しだけのぞかせてください」
と少将の尼に求めた。それだけのことでも約束してくれた
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