った人の名を言って出たりするのが恐ろしいということ、などを申していた話のついでに、
「怪しい経験を私はいたしました。今年の三月に年をとりました母が願のことで初瀬へまいったのでございましたが、帰り途《みち》に宇治の院と申す所で一行は宿泊いたしたのでございます。そういたしましたような人の住まぬ大きい建物には必ず悪霊などが来たりしておりまして、病気になっておりました母のためにも悪い結果をもたらすまいかと心配をいたしておりますと、はたしてこんなことがあったのでございます」
と、あの宇治で浮舟の姫君を発見した当時のことを申し上げた。
「ほんとうに不思議なことがあるものね」
と仰せになって、気味悪く思召す中宮は近くに眠っていた女房たちをお起こさせになった。大将と友人になっている宰相の君は初めからこの話を聞いていた。起こされた人たちには少しく話の筋がわからなかった。僧都は中宮が恐ろしく思召すふうであるのを知って、不謹慎なことを申し上げてしまったと思い、その夜のことだけは細説するのをやめた。
「その女の人が今度のお召しに出仕いたします時、途中で小野に住んでおります母と妹の尼の所へ立ち寄りますと、出
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