事を、薫がこんなにまで丁寧に営むことによって、どんな婦人であったのかと驚いて思ってみる人たちも多かったが、常陸守が来ていて、はばかりもなく法会《ほうえ》の主人顔に事を扱っているのをいぶかしくだれも見た。少将の子の生まれたあとの祝いを、どんなに派手に行なおうかと腐心して、家の中にない物は少なく、[#「、」は底本では「。」]支那《しな》、朝鮮の珍奇な織り物などをどうしてどう使おうと驕《おご》った考えを持っていた守ではあったが、それは趣味の洗練されない人のことであるから、美しい結果は上がらなかった。それに比べてこの法会の場内の荘厳をきわめたものになっているのを見て、生きていたならば、自分らと同等の階級に置かれる運命の人でなかったのであったと守は悟った。兵部卿の宮の夫人も誦経《ずきょう》の寄付をし、七僧への供膳《きょうぜん》の物を贈った。
 今になって隠れた妻のあったことを帝《みかど》もお聞きになり、そうした人を深く愛していたのであろうが、女二《にょに》の宮《みや》への遠慮から宇治などへ隠しておいたのであろう、そして死なせたのは気の毒であると思召した。
 浮舟の死のために若い二人の貴人の心の中
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