るとすれば、かえって異父弟の世話を引き受けようなどと薫はしなかったことであろうと思われる。自身の過失から常陸夫人の愛女を死なせたのがかわいそうで、せめて慰めを与えることだけはしたいと思う心から、他の譏《そし》りがあろうとも深く気にとめまいという気になっているのである。
薫は四十九日の法事の用意をさせながらも実際はどうあの人はなったのであろう、まだ一点の疑いは残されていると思うのであるが、仏への供養をすることは人の生死にかかわらず罪になることではないからと思い、ひそかに宇治の律師の寺で行なわせることにしているのであった。六十人の僧に出す布施の用意もいかめしく薫はさせた。母夫人も法会には来ていて、式をはなやかにする寄進などをした。兵部卿の宮からは右近の手もとへ銀の壺《つぼ》へ黄金の貨幣を詰めたのをお送りになった。人目に立つほどの派手《はで》なことはあそばせなかったのである。ただ右近が志として供物にしたのを、事情を知らぬ人たちはどうしてそんなことをしたかと不思議がった。薫のほうからは家司《けいし》の中でも親しく思われる人たちを幾人もよこしてあった。在世中はだれもその存在を知らなんだ夫人の法
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