こにいるかをありのままには夫人の言ってなかった常陸守であったから、寂しい生活をしていることであろうと思いもし、言いもしていたのを大将に京へ迎え入れられたあとで、名誉な結婚をしたと知らせようとも夫人が思っていたうちに浮舟は死んでしまったのであったから、隠しておくのもむだなことであると夫人は思い、薫と結婚をして宇治に住まわせられていたこと、そして病んで死んだ話を泣く泣く語るのであった。薫からもらった手紙も出して見せると、貴人を崇拝する田舎《いなか》風な性質になっている守は驚きもし臆《おく》しもしながら繰り返し繰り返し薫の手紙を読んでいる。
「幸福で名誉な地位を得ていて死んだ方だ。自分も大将の家人《けにん》の数にはしていただいている者で、お邸へはまいることがあっても近くお使いになることもなかった。とても気高《けだか》い殿様なのだ。息子たちのことを言ってくだすったのは非常にあれらのために頼もしいことだ」
こう言って喜ぶのを見ても、まして姫君が大将夫人として生きていたならばと思わないではいられない夫人は、臥《ふ》しまろんで泣いていた。守もこの時になってはじめて泣いた。しかしながら浮舟が生きてい
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