いう強いことのおできになるとは思われませんでした」
などと侍従が話すことによって、宮はいっそうお悲しみが深くなり、命数が尽きて死んだということよりも、どんなに物思いを多くして恐ろしい川へなど身を投げたのであろうと御想像あそばすのが苦しく、その時に見つけることができてとどめえたならばと、沸きかえるような心持ちにおなりになるのであるが、今ではすべてむなしいことであった。
「あのお手紙を始末してお焼きになりました時に、なぜ私らの頭が働かなかったのでございましょう」
と侍従は言ったりして、夜の明けるまで語っても語り足りないというふうであった。寺からもらった経巻へ書いて母君の返事にした歌のことなどもお話しした。侍従などは何とも宮の思っておいでにならなかった女であったが、哀れに思召すために、
「自分の所にいるがよい。あちらにいる奥さんもあの人には他人でなかったのだから」
と仰せられたが、
「そうしてお仕えさせていただきましては何も何も悲しいことになりましょう。ともかくもお忌を済ませましてから、どうとも身の振り方を考えます」
侍従はこう申し上げた。
「また来るがいい」
こんな人とすらも別れ
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