た。
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昨夜の悪夢の中であなたを見たものですから、ほうぼうの寺へ誦経《ずきょう》を頼みました。その夢のあとは眠られなかったものですから、今日また昼寝をしました夢に、人が大不吉だという夢の中でまたあなたを見たのです。驚きながらこの手紙を書きます。謹慎日はよく謹慎してお暮らしなさい。寂しいそのお家《うち》へ時々おいでになります大将の関係から、どんな呪《のろい》を受けておいでになるかわからないのにあなたは病気だし、ちょうどこんな時に悪夢が続くので心配しています。私が行きたいのだけれど、少将の妻の産前の容体が不安で、物怪風《もののけふう》に煩っていますから、しばらくでもそばを離れますことは主人がやかましいため出かけられませぬ。そこの近くの寺へも誦経を頼みなさい。
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と書いて、寺へ納めるべき物、寺への依頼状も添えて持たせて来たのであった。
もう死ぬ覚悟をしている自分とも知らずに、こんなに心をつかっているかと浮舟《うきふね》は母の愛を悲しく思った。寺へその使いをやった間に、母への返事を姫君は書くのであった。言いたいことは多かったが気恥ずかしくて、た
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