源氏物語
浮舟
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)兵部卿《ひょうぶきょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)それ以来|兵部卿《ひょうぶきょう》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]何よりも危ふきものとかねて見し小舟の
[#地から3字上げ]中にみづからを置く     (晶子)

 兵部卿《ひょうぶきょう》の宮は美しい人をほのかに御覧になったあの秋の夕べのことをどうしてもお忘れになることができなかった。たいした貴族の娘ではないらしかったが婉嬋《えんぜん》とした美貌《びぼう》の人であったと、好色な方であったから、それきり消えるようにいなくなってしまったことを残念でたまらぬように思召《おぼしめ》しては、夫人に対しても、
「何でもない恋の遊戯をしようとするくらいのことにもあなたはよく嫉妬《しっと》する、そんな人とは思わなかったのに」
 こんなふうにお言いになり、怨《うら》みをお洩《も》らしになるおりおり、中の君は苦しくてありのままのことを言ってしま
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