もお苦しかった。
 お庭の菊の花がまだ終わりがたにもならず盛りなころ、空模様も時雨《しぐれ》になって寂しい日であったが、帝はどこよりもまず藤壺へおいでになり、故人の女御のことなどをお話し出しになると、宮はおおようではあるが子供らしくはなく、難のないお答えなどされるのを帝はかわいく思召した。こうした人の価値を認めて愛する良人《おっと》のないはずはない、朱雀《すざく》院が姫宮を六条院へお嫁《とつ》がせになった時のことを思ってごらんになると、あの当時は飽き足らぬことである、皇女は一人でおいでになるほうが神聖でいいとも世間で言ったものであるが、源中納言のようなすぐれた子をお持ちになり、それがついているために昔と変わらぬ世の尊敬も女三の宮が受けておいでになる事実もあるではないか、そうでなく独身でおいでになれば、弱い女性の身には、自発的のことでなく過失に堕《お》ちてしまうことがあって、自然人から軽侮を受ける結果になっていたかもしれぬと、こんなことを帝はお思い続けになって、ともかくも自分の位にいるうちに婿をきめておきたい、だれが好配偶者とするに足る人物であろうとお思いになると、その女三の宮の御子の源
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