と想像されて、つたない中に言ってある心を身にしむように中の君は思い、筆任せに、それほど深くお思いにならぬことであろうと思われることを、多くの美しい言葉で飾ってお送りになる方の文《ふみ》よりもこのほうに心の引かれる気がして、涙さえこぼれてきたために、返事を自身で書いた。
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この春はたれにか見せんなき人のかたみに摘める峰のさわらび
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使いには纏頭《てんとう》が出された。
盛りの美しさを備えた人が、いろいろな物思いのために少し面痩《おもや》せのしたのもかえって貴女《きじょ》らしい艶《えん》な趣の添ったように見え、総角《あげまき》の姫君にもよく似ていた。いっしょにいたころはどちらにも特殊な美しさがあって、似ているように見えなかったのであるが、今ではうかとしておれば大姫君であるという錯覚が起こるのを、遺骸《いがい》だけでも永《なが》くとどめてながめていられるものだったならばと、朝夕に恋しがっていた源中納言の夫人になっておいでになればよかったものを、運命のそれを許さなかったのが惜しいと思い、女房たちは残念がっていた。薫《かおる》の家のほうから始
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