亡《かく》れになった時の悲しみにややまさった悲しさ恋しさに、日のたつのも悟らぬほど歎き続けているが、命数には定まったものがあって、死にたくても死なれぬのも人生の悲哀の一つであると見られた。
御寺《みてら》の阿闍梨《あじゃり》の所から、
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年が変わりましてのちどんな御様子でおいでになりますか。御仏《みほとけ》へのお祈りは始終いたしております。今になりましてはあなた様お一方のために幸福であれと念じ続けるばかりです。
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などという手紙を添え、蕨《わらび》や土筆《つくし》を風流な籠《かご》に入れ、その説明としては、
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これは童子どもが山に捜して御仏にささげたものです、初物です。
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とも書かれてあった。悪筆で次の歌などは大形《おおぎょう》に一字ずつ離して書いてある。
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君にとてあまたの年をつみしかば常を忘れぬ初蕨なり
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女王《にょおう》様に読んでお聞かせ申してください。
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と女房あてにしてあった。一所懸命に考え出した歌であろう
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