自身でも出かけて来て、除服後の姫君たちの衣服その他を周到にそろえた贈り物をした。その時に阿闍梨も寺から出て来た。二人の姫君は名香《みょうこう》の飾りの糸を組んでいる時で、「かくてもへぬる」(身をうしと思ふに消えぬものなればかくてもへぬるものにぞありける)などと言い尽くせぬ悲しみを語っていたのであるため、結び上げた総角《あげまき》(組み紐の結んだ塊《かたまり》)の房《ふさ》が御簾《みす》の端から、几帳《きちょう》のほころびをとおして見えたので、薫はそれとうなずいた。
「自身の涙を玉に貫《さ》そうと言いました伊勢《いせ》もあなたがたと同じような気持ちだったのでしょうね」
こうした文学的なことを薫が言っても、それに応じたようなことで答えをするのも恥ずかしくて、心のうちでは貫之《つらゆき》朝臣《あそん》が「糸に縒《よ》るものならなくに別れ路《ぢ》は心細くも思ほゆるかな」と言い、生きての別れをさえ寂しがったのではなかったかなどと考えていた。御仏《みほとけ》への願文を文章博士《もんじょうはかせ》に作らせる下書きをした硯《すずり》のついでに、薫は、
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あげまきに長き契りを結
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